凝集沈殿法と加圧浮上法の使い分け方

排水処理における固液分離の代表的な方法として、「凝集沈殿法」と「加圧浮上法」が挙げられます。どちらも凝集剤を用いて排水中の懸濁物質(SS)を除去する技術ですが、それぞれに特徴があり、排水の性質によって使い分けることが重要です。本記事では、これら2つの技術の原理、メリット・デメリット、そして使い分けのポイントについて詳しく解説します。
凝集沈殿法と加圧浮上法の基礎知識
凝集沈殿法とは?排水処理における役割と仕組み
凝集沈殿法は、排水中の微細なSS粒子を凝集剤によって大きなフロック(凝集体)に成長させ、その重力を利用して沈殿・分離する方法です。具体的には、排水に凝集剤を添加・撹拌し、微細なSS粒子同士を結合させてフロックを形成します。その後、沈殿槽でフロックを沈降させ、上澄水と分離します。沈殿したフロックは汚泥として系外へ排出されます。
この方法は、排水処理における前処理や高度処理など、幅広い用途で用いられています。
加圧浮上法とは?その原理と特徴
加圧浮上法は、微細な気泡を排水中に発生させ、SS粒子や油脂類を気泡に付着させて浮上分離する方法です。まず、排水の一部または全部を圧力タンク内で加圧し、空気を飽和溶解させます。この加圧水を浮上槽内の原水と混合すると、急激な圧力低下により、水中に溶け込んでいた空気が過飽和状態となり、微細な気泡となって析出します。この微細な気泡がSS粒子や油脂類に付着し、フロックを形成して水面へと浮上させます。浮上したフロックはスカムスキマーなどによって系外へ排出され、処理水は清澄な状態で得られます。
凝集剤の役割:沈殿・浮上を促進するメカニズム
凝集沈殿法と加圧浮上法のいずれにおいても、効率的な固液分離を実現するためには、凝集剤の適切な選定と使用が重要です。凝集剤は、排水中の微細なSS粒子表面の電荷を中和したり、粒子同士を架橋したりすることで、フロックの形成を促進します。凝集剤には、無機系凝集剤(ポリ塩化アルミニウム(PAC)、硫酸バンドなど)と高分子凝集剤(ポリアクリルアミド系など)があり、排水の性質やpH値などを考慮して選定します。
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排水処理における使い分け:2つの手法を比較
凝集沈殿法と加圧浮上法は、どちらも排水処理における固液分離技術ですが、それぞれに適した排水の性質や処理条件があります。
排水水質と適応性:SS・油脂濃度がポイント
一般的に、凝集沈殿法は、比較的沈降性の良いSSを含む排水に適しています。一方、加圧浮上法は、比重が小さく沈降しにくいSSや、油脂類を多く含む排水に適しています。特に、乳化状態の油脂類は、加圧浮上法でなければ効率的に除去することが困難です。
処理能力と設置面積:大規模処理は沈殿、小規模は浮上?
処理能力の観点では、凝集沈殿法は大規模な排水処理に適しています。沈殿槽は、滞留時間を長く取ることで、高濃度のSSを含む排水でも安定して処理することができます。一方、加圧浮上法は、比較的小規模から中規模の排水処理に適しています。加圧浮上装置は、沈殿槽に比べてコンパクトな設計が可能であり、設置面積を小さく抑えることができます。ただし、近年では加圧浮上法の大容量化も進んでいます。
経済性:初期投資とランニングコストのバランス
初期投資に関しては、加圧浮上装置は圧力タンクや加圧ポンプなどの特殊な機器を必要とするため、凝集沈殿設備に比べて高くなる傾向があります。一方、ランニングコストに関しては、加圧浮上法は、汚泥の含水率が低いため、汚泥処理費用を抑えることができる可能性があります。また、薬剤の使用量や電力消費量なども、排水の性質や処理条件によって異なるため、総合的な経済性を比較検討する必要があります。
凝集沈殿法が適した排水と具体的な処理例
無機系排水:金属排水・研磨排水の処理に最適
凝集沈殿法は、金属排水や研磨排水などの無機系排水の処理に適しています。これらの排水には、金属イオンや微細な無機粒子が含まれていることが多く、凝集剤によって効率的にフロックを形成し、沈殿・分離することができます。
高濃度SS排水:沈降性粒子を含む排水
高濃度のSSを含む排水、特に沈降性の良い粒子を含む排水には、凝集沈殿法が有効です。例えば、土木工事現場から排出される濁水などは、凝集沈殿法によって効率的に処理することができます。
低温排水:水温が低い排水
水温が低い排水では、SS粒子の沈降速度が遅くなるため、凝集沈殿法が適しています。加温設備を必要とせず、ランニングコストを抑えながら安定した処理が可能です。
日本技建の凝集処理装置
日本技建は40年にわたり前処理から生物処理における設備機器を現場に導入して参りました。その中でも、当社独自の凝集ろ装置 FST型はスペースの限られた現場で採用頂いております。凝集処理とろ過工程を1台で行うことができ、処理能力の追加用や簡易排水処理用として実績が多数ございます。
加圧浮上法が有効な排水と業界別活用事例
油脂含有排水:食品工場・厨房排水に最適
加圧浮上法は、油脂類を多く含む排水の処理に最適です。特に、食品工場や厨房排水など、乳化状態の油脂を含む排水には、加圧浮上法が効果を発揮します。微細な気泡が油脂類に付着し、効率的に浮上分離することができます。
乳化状態の排水:界面活性剤を含む排水
界面活性剤を含む排水など、乳化状態の排水の処理にも加圧浮上法が有効です。界面活性剤によって安定化された乳化粒子は、沈殿処理では分離が困難ですが、加圧浮上法であれば、微細な気泡によって効率的に分離することができます。
微細SS排水:塗装排水・化学工場排水に有効
塗装排水や化学工場排水など、微細なSS粒子を含む排水の処理にも、加圧浮上法が用いられます。微細な気泡は、これらの微細な粒子とも効率的に接触し、浮上分離することができます。
日本技建の凝集処理実績
水産加工工場の水質改善事例

水産加工工場の排水中の油分とBOD負荷が生物処理施設の処理能力を超え、異臭や着色が発生し、近隣住民から苦情が寄せられていました。そこで、既存施設の前段にIKフロックスクリーン FST型を導入。凝集処理と独自ろ布「ロンメッシュ」による濾過で油分とBODを効果的に除去し、異臭・濁度が改善。省スペース設計によりスムーズな導入を実現し、苦情も解消しました。
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乳製品工場の追加処理による水質改善事例

乳製品工場の排水には高濃度の油脂やタンパク質が含まれ、既存の加圧浮上設備では処理が困難でした。油脂分が生物処理を阻害し、水質悪化を引き起こしていました。そこでIKフロックスクリーン FST型を導入。凝集処理と独自ろ布「ロンメッシュ」により油分とBODを効率的に除去し、排水基準をクリア。処理工程を簡素化し、ランニングコストの削減にも成功しました。
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凝集沈殿法と加圧浮上法の最適な運用方法
凝集沈殿法の最適化:凝集剤選定とpH管理
凝集沈殿法を最適に運用するためには、適切な凝集剤の選定とpH管理が重要です。凝集剤の種類や添加量は、排水の水質やSSの特性によって異なります。ジャーテストなどを実施し、最適な凝集条件を決定する必要があります。また、pHは凝集剤の効果に大きく影響するため、必要に応じてpH調整剤を併用し、最適なpH範囲を維持することが重要です。
加圧浮上法の性能向上:飽和溶解効率と気泡径の制御
加圧浮上法の性能を向上させるためには、飽和溶解効率を高め、微細な気泡を安定的に生成することが重要です。圧力タンク内の圧力や水位、加圧水の流量などを管理し、高い飽和溶解効率を維持する必要があります。また、気泡径はSS粒子や油脂類との接触効率に影響するため、ノズルの選定や運転条件を調整し気泡径を制御する必要があります。
併用による相乗効果:前処理としての加圧浮上
凝集沈殿法と加圧浮上法を併用することで、相乗効果が得られる場合があります。例えば、高濃度の油脂類を含む排水の場合、前処理として加圧浮上法を用いて油脂類を除去し、後段の凝集沈殿法の負荷を軽減することができます。これにより、処理効率の向上や薬剤使用量の削減が期待できます。
排水処理の課題解決:困ったときの対処法
凝集沈殿法で沈降不良が発生した場合の対策
凝集沈殿法において、フロックの沈降不良が発生した場合には、以下の対策が考えられます。
- 凝集剤の種類や添加量の見直し
- pH調整剤の併用による最適なpH範囲の維持
- 攪拌条件の最適化
- 沈殿槽の滞留時間の延長
加圧浮上法で浮上分離がうまくいかない場合の対策
加圧浮上法において、浮上分離がうまくいかない場合には、以下の対策が考えられます。
- 圧力タンク内の圧力や水位、加圧水流量の調整
- ノズルの点検・清掃
- 凝集剤の種類や添加量の見直し
- 浮上槽の滞留時間の延長
日本技建にお任せください

日本技建は、排水処理の専門メーカーとして、40年にわたり、お客様の多様なニーズに応える排水処理設備を設計・製作してまいりました。また、当社独自のろ布「IKロンメッシュ」を採用した製品群で支持をいただいております。設備の診断サービスもおこなっておりますので、排水処理に関するお困りごとがございましたら、日本技建までお気軽にご相談下さい。