技術コラム

高分子凝集剤の種類と特徴

高分子凝集剤とは?その種類と役割を解説

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高分子凝集剤は、排水処理に欠かせない化学薬品です。水中に浮遊している微細な汚れ(粒子)を、目に見える大きな「フロック(凝集体)」にまとめることで、効率的な除去を可能にします。この作用は、「凝集処理法」と呼ばれる工程で利用されます。

凝集処理剤には有機系無機系がありますが、高分子凝集剤は有機系に分類されます。高分子凝集剤は、その名の通り大きな分子(高分子)から構成されており、水中の微小な固体粒子やコロイドを吸着・凝集させ、より容易に分離できるように作用します。

高分子凝集剤の種類

高分子凝集剤は合成高分子凝集剤といわれる、ポリアクリルアミド(AMD)などの合成化学物質から作られたものが主流です。この合成高分子凝集剤にはいくつかの種類があります。主に以下のように分類されます

① アニオン性

分子内に負の電荷を持つ官能基を有する凝集剤です。幅広いph範囲で効果を発揮できますが特にアルカリ性での環境に適しています。
②ノニオン性

pHの影響を受けにくいため、広い用途で使用されます。他の凝集剤と併用して補強用としても使用されます。

③カチオン性

アルカリ性に適しているアニオン性に対して、カチオン性は酸性から中性の液質に適しています。天然高分子を化学的に修飾して作られたもの。天然高分子の環境特性を持ちながら、合成高分子の効率も兼ね備えています。

④両性

カチオン性高分子凝集剤や無機凝集剤と併用し効果をあげる方法が一般的です。

高分子凝集剤とPACの違い

PAC(ポリ塩化アルミニウム)もまた水処理における凝集剤ですが、高分子凝集剤とはいくつかの点で異なります。PACは「凝結」、一方の高分子凝集剤は「凝集」で使用されます。

凝結と凝集はこのような点で異なります。

高分子凝集剤PAC(ポリ塩化アルミニウム)
分類有機化合物(高分子)無機化合物(アルミニウム塩)
主な作用凝集(フロック形成)凝結(フロック形成の初期段階)
特徴PACで形成された小さな粒子を大きなフロックに成長させる。PACと併用されることが多い。汚れの粒子同士の反発力を中和し、凝集のきっかけを作る。
・より広いpH範囲で使用可能。

「凝集」は、高分子凝集剤などの作用で微小な粒子が集まり、大きなフロックを形成するプロセスを指します。一方、「凝結」は、そのフロックがさらに集まり、重力で沈降・分離するプロセスを指します。PACは凝集の初期段階で汚れの性質を変える役割を担い、高分子凝集剤はその後、フロックを大きくする役割を担います。

高分子凝集剤を入れすぎるとどうなる?

高分子凝集剤の適量を超えて使用すると、いくつかの逆効果を引き起こす可能性があります。

①再凝集

再度凝集を引き起こし、固体粒子が再び分散してしまうことがあります。

②濁度の増加

処理水の濁度が増加し、透明度が低下することがあります。

マイナスに帯電している汚れをプラスに帯電させるために凝集剤で中和しているともいえます。中和をさせるには適切な量を投入する必要があり、超えてしまった場合はプラスに帯電するため、凝結がうまく行えず濁度が上がってしまうことがあります。

高分子凝集剤の危険性

高分子凝集剤は水処理において有益である一方で、適切な量を超えていると環境へ影響もあるとの指摘もあります。主に魚類や藻類に対する影響が懸念されています。

魚類への影響では、急性毒性試験において高濃度の高分子凝集剤が魚類の鰓運動を圧迫し、酸素の溶解拡散を阻害することで死亡率が増加することが確認されています。亜急性毒性試験では、長期間にわたり低濃度の使用では影響が少ないものの、高濃度では成長や行動に悪影響が見られます。

藻類への影響については、ノリやワカメに対する試験で高濃度の凝集剤がガス交換や栄養吸収を阻害し、成長率や光合成速度を低下させることが示されています。

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