技術コラム

PAC(無機凝集剤)の入れすぎで起こる3つのトラブル

排水処理の凝集工程において、PAC(ポリ塩化アルミニウム)は非常に重要な役割を果たします。

しかし、「汚れをしっかり落としたい」「水質変動が怖い」といった理由から、安全率を見込んで多めに添加してしまう現場は少なくありません。実は、PACの入れすぎは凝集効果を高めるどころか、深刻なトラブルを引き起こす原因となります。

ここでは、現場の設備・保全責任者を悩ませる代表的な3つのトラブルを解説します。

1. 処理水の白濁(再分散現象)

PACを過剰に注入すると、水中の懸濁物質(SS)の表面電荷がプラスに反転してしまう「再分散(過分散)」という現象が起こります。

本来、マイナスに帯電している汚れの粒子をプラスの電荷を持つPACで中和して固めるのが凝集のメカニズムです。

しかし、PACが多すぎると粒子同士がプラスの電荷で反発し合い、フロック(凝集塊)が形成されず、処理水全体が白く濁った状態(白濁)になってしまいます。

これにより、排水基準値をオーバーするリスクが高まります。

2. フロックの沈降不良と処理水への流出(キャリーオーバー)

適正な薬注量であれば、大きく重いフロックが形成され、沈殿槽で速やかに沈降します。

しかし、PACの入れすぎによって形成されたフロックは、細かく軽く、もろい性質を持ちます。その結果、沈殿槽での沈降不良を引き起こし、上澄み液と一緒にフロックが後段の処理設備や放流先へ流出する「キャリーオーバー」が発生します。

これがフィルターの目詰まりや設備トラブルの引き金となります。

3. 汚泥発生量の増加とpH低下による設備への悪影響

PACは無機凝集剤であるため、添加した分だけ汚泥の発生量が増加します。

過剰注入はそのまま産業廃棄物としての汚泥量の増大に直結し、脱水機の負荷を高め、処理コストを圧迫します。

さらに、PACは酸性の薬剤であるため、入れすぎると排水のpHが急激に低下します。pHが適切でないと後段の生物処理設備(微生物)にダメージを与えるだけでなく、配管やポンプなど設備の腐食を早める原因にもなります。

なぜPACを入れすぎてしまうのか?根本的な原因

トラブルの多くは「薬剤の過剰投入」が原因だと分かっていても、現場ではなかなか適正化が進まないのが実情です。そこには、日々の生産活動を支える現場ならではの課題が潜んでいます。

排水の水質・水量変動に対する調整不足

製造工場では、生産ラインの稼働状況や品種切り替え、機器の洗浄などにより、原水(排水)の濃度やpH、水量が時間帯によって大きく変動します。

この変動に対してリアルタイムに薬注量を追従させるのは難しく、最も濃度が高い(条件が悪い)ピーク時に合わせてPACの注入量を固定設定してしまうケースが多々あります。その結果、低濃度時には必然的に「入れすぎ」の状態となってしまいます。

経験や勘に頼ったアナログな薬注管理

長年現場を支えてきた熟練担当者の「目視」や「経験則」に頼ってダイヤルを調整している現場も少なくありません。

しかし、水処理の専門家ではない若手や異動してきたばかりのスタッフにはその感覚が伝承しづらく、「とりあえず白濁や異常が出ないように多めに入れておく」という防衛的な運用になりがちです。

これが、マンパワー不足の中でトラブル対応をさらに増やす悪循環を生んでいます。

PACの適正化で白濁・沈降不良を解決する対処法

PACの入れすぎによる白濁や沈降不良を防ぎ、設備を安定稼働させるためには、科学的なアプローチによる適正化が必要です。現場の負担を減らしつつ、確実な処理を実現するためのポイントを解説します。

定期的なジャーテストによる最適注入率の把握

最も確実な対処法は、定期的にジャーテスト(ビーカー試験)を実施し、現在の排水に対するPACの最適な注入率を把握することです。

排水の性状が変化した際や、季節の変わり目などには必ず実施し、フロックの形成状況や沈降速度、上澄み液の透明度を目視で確認します。

これにより、「とりあえず多めに入れる」という勘に頼った運用から脱却できます。

pH調整の見直しによる凝集効果の最大化

PACの凝集能力が最も発揮される最適なpH範囲(一般的にpH6.0〜8.0程度)を維持することが重要です。

PACを注入するとpHが下がるため、苛性ソーダなどのアルカリ剤を併用してpHをコントロールします。

白濁や沈降不良が起きた際は、PACの量だけでなく、凝集反応槽のpHが適正範囲に収まっているかをpH計で直ちに確認し、中和剤の注入量を再調整してください。

高分子凝集剤とのバランス調整

PAC(無機凝集剤)で微細なフロックを形成した後に、高分子凝集剤(ポリマー)を添加してフロックを粗大化させます。

この2つの薬剤のバランスが崩れると沈降不良を招きます。PACを減らした分、高分子凝集剤の選定(アニオン、カチオン、両性)や濃度、添加量を見直すことで、沈降性が高く脱水しやすい強固なフロックを形成することが可能です。

排水処理の課題解決事例:薬注・設備の最適化

日々のメンテナンスや緊急対応に追われる現場の負担を根本から軽減するには、運用面での努力だけでなく、設備的な改善を取り入れることが効果的です。

薬注設備の自動化・更新によるトラブル解消

水質や水量の変動に合わせて自動でPACやアルカリ剤の注入量を制御するシステムへの更新が有効です。

pH計や流量計と連動した自動薬注ポンプを導入することで、過剰注入を未然に防ぎ、白濁トラブルや薬剤コストを大幅に削減できます。

これにより、現場スタッフが手動でバルブ調整を行う手間が省け、緊急トラブルのリスクも低減します。

沈殿槽の改修や最新設備による汚泥処理の効率化

老朽化して処理能力が落ちた沈殿槽の内部改修や、凝集不良による目詰まりを防ぐための一次処理(スクリーン等の設置)の強化も重要です。

設置スペースに制約がある工場でも、省スペースで設置可能な組立式タンクを利用した設備の増強や、イージーメンテナンス性を備えた脱水機・濾過設備への更新により、止まらない・詰まらない安定した排水処理システムを構築できます。

PAC注入の最適化や排水処理設備の改善なら日本技建にお任せください

排水基準値の超過リスクや、設備の故障による突発的なトラブルは、生産活動を最優先とする工場の設備・保全責任者にとって大きなストレスです。

「現在のPAC注入量が本当に適正かわからない」「設備が古く、だましだまし使っているが限界が近い」とお悩みであれば、排水処理のプロフェッショナルである日本技建株式会社にご相談ください。

私たちは、単なる機器の販売にとどまらず、水質分析やジャーテストに基づく最適な薬剤・プロセスの選定から、省スペースでの設備更新、設計・施工までをワンストップでサポートします。

IKロンメッシュなどのメンテナンス性を重視した製品群や、工期を短縮できる組立式タンクなどを活用し、現場のマンパワー不足を解消する「止まらない・手のかからない」排水処理設備をご提案いたします。

排水処理の安定稼働とコスト削減に向けた第一歩として、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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